2017年03月19日

意3条の2ただし書の時期的要件

 意匠法3条の2の「ただし書」の規定を、類似する特許法29条の2と比べると、時期的要件の相違が見られます。

特許法
第二十九条の二
(本文省略)
ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

意匠法
第三条の二
(本文省略)
ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。



 意匠法3条の2、ただし書の追加改正(平成18年)について、青本の解説を読むと、「後日の出願を認めることが先願の意匠権の実質的な権利期間の延長につながらないように一定程度の出願の期限を設けるべきことを考慮して」とあります。

青本19版(3条の2)
「平成一八年の一部改正において、同一出願人の場合は権利の錯綜の問題が生じないこと、後日の出願を認めることが先願の意匠権の実質的な権利期間の延長につながらないように一定程度の出願の期限を設けるべきことを考慮して、先願の意匠公報の発行の日前までに同一人が出願した後願の部品の意匠又は部分意匠について、本条の規定により拒絶されないこととしたものである。」


 疑問に感じるのが、意匠法3条1項(新規性)との関係です。

 少なくとも先願の意匠公報が発行された後は、3条1項で拒絶されるため、あえて、3条の2で時期的要件を規定する意味は無いように感じます。

 ポイントは、特許法には無い「秘密意匠(特許)」の存在です。

 先願が秘密意匠の場合、公報が発行されたとしても3条1項の引例にならず、後願が拒絶されなくなり問題が生じます。

 この点を担保するために、意匠法では、ただし書で時期的要件を規定しつつ、更に、かっこ書で秘密意匠の最初の公報発行を除く規定を設けている。

 このように捉えると、意3条の2の条文理解が進むと思います。

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posted by 目白ゼミナール at 09:40| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月05日

意3条の2と国際公表

 まず、意匠法3条の2と趣旨(の一部)を共通にする特許法29条の2と国際公開との関係を確認しましょう。

第百八十四条の十三  第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案登録出願が国際特許出願又は実用新案法第四十八条の三第二項 の国際実用新案登録出願である場合における第二十九条の二の規定の適用については、同条中「他の特許出願又は実用新案登録出願であつて」とあるのは「他の特許出願又は実用新案登録出願(第百八十四条の四第三項又は実用新案法第四十八条の四第三項 の規定により取り下げられたものとみなされた第百八十四条の四第一項 の外国語特許出願又は同法第四十八条の四第一項 の外国語実用新案登録出願を除く。)であつて」と、「出願公開又は」とあるのは「出願公開、」と、「発行が」とあるのは「発行又は千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約第二十一条に規定する国際公開が」と、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面」とあるのは「第百八十四条の四第一項又は実用新案法第四十八条の四第一項 の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」とする。

 先願が国際公開された場合、取り下げ擬制とならない限り、その後に拒絶査定が確定したとしても、特29条の2の要件に該当することになります。

 それでは、意匠法ではどのようになるのでしょうか?

第六十条の六  日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日(以下「国際登録の日」という。)にされた意匠登録出願とみなす。

 国際公表されたものは、国際登録の日にされた意匠登録出願とみなされます(意60条の6)。

 ところが、特許法184条の13のような規定は意匠法には存在しません。

 したがって、先願が国際意匠登録出願であって、国際公表されたとしても、意3条の2がそのまま適用されることになります。


第三条の二  意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。

 つまり、先願に係る国際意匠登録出願であって、国際公表されたとしても、その後に拒絶が確定すれば、意3条の2の適用において後願を排除する引例にはなりません。

 特許法29条の2との違いは、どこから来るのでしょうか?

 それは趣旨(の一部)の相違です。

 意匠法3条の2には、特許法29条の2には無い「権利の錯綜防止」といった重要な趣旨があります。

 国際公表されたとしても、その後に拒絶が確定すれば「権利の錯綜」が生じることはなく、したがって、意3条の2の読み替え規定を設けるまでも無いとされたものと考えられます。 


 意匠法3条の2は、特許法29条の2と類似する規定ですが、両者は似て非なる条文です。

 今回の他の出願が国際公開(公表)された場合の相違や、創作者の要件の相違等、両条文の相違点についての理解を深めておくことをお勧めします。 

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2017年02月05日

結合商標の類否判断

 結合商標の類否判断を論点とする出題への対策としては、「リラ宝塚事件」と「つつみのおひなっこや事件」の2つの判例を押さえておくことが必要です。

リラ宝塚事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/833/053833_hanrei.pdf
「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によつて称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによつて簡略に称呼、観念され、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである。」

つつみのおひなっこや事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/773/036773_hanrei.pdf
「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである。」

 両判決の理解はもちろん必要ですが、両者の関係理解(解釈)を示すことで、高得点が狙える可能性があります。

 一つの考え方として、商標法審査基準の改訂議論の中で、「矛盾の無い」考え方が示されていますので参考になるでしょう。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/t_mark_wg_new22shiryou/02.pdf

「結合商標を、@不可分的に結合していない商標とA不可分的に結合されている商標の2つに分けた上で、@の場合がリラ宝恷膜盾フ規範を適用する場面で、Aの場合がリラ宝恷膜盾反対解釈して、「商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合においては、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは、原則として許されない」とした上で、このような場合であっても要部抽出ができる例外を認めたものがつつみのおひなっこや事件で示されたと解するものである。」

 共に最高裁判決ですので、弁理士試験において出題の可能性が高い判例と言えます。

 特に、論文対策としては、判決の結論と理由の再現力を高めておくことをお勧めします。

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posted by 目白ゼミナール at 17:34| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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