2016年11月27日

「排他権」と「実施権」

 意匠法では、類似する意匠(本意匠と関連意匠)に係る意匠権を、複数の者に分離移転することは禁じられています。

 本意匠が消滅等した後に残った複数の関連意匠に係る意匠権も、類似するか否かにかかわらず、分離移転を禁止する程の徹底ぶりです。

第二十二条 本意匠及びその関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。
2  本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅したとき、無効にすべき旨の審決が確定したとき、又は放棄されたときは、当該本意匠に係る関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。


 専用実施権も、複数の者に分離して設定することができません。

第二十七条 意匠権者は、その意匠権について専用実施権を設定することができる。ただし、本意匠又は関連意匠の意匠権についての専用実施権は、本意匠及びすべての関連意匠の意匠権について、同一の者に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。

 一方、商標法では、平成8年に連合商標制度を廃止し、いわゆる禁止権が重複する権利の分離(分割)移転を許容する制度に改正されました。

第二十四条の二 商標権の移転は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる。

 また、専用使用権も、複数の者に分離して設定することができます。

第三十条 商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。(ただし書以下省略)

 ただし、事後的な混同防止の担保措置(弊害防止)の規定として、併せて52条の2、53条の取消審判制度が新設されています。

第五十二条の二
商標権が移転された結果、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なつた商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者が不正競争の目的で指定商品又は指定役務についての登録商標の使用であつて他の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。


第五十三条  専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。(ただし書以下省略)


 それでは、「実施(使用)権の許諾」の方はどうでしょうか?

 商標法では、通常使用権の取り扱いは、専用使用権と同様です。

第三十一条  商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。(ただし書以下省略)

 事後的な担保措置の規定も、53条に「通常使用権」が組み込まれおり、専用使用権と同様です。


 最後に、意匠法の「通常実施権」について見てみましょう。

第二十八条  意匠権者は、その意匠権について他人に通常実施権を許諾することができる。

 排他権(意匠権、専用実施権)の分属を嫌う意匠法ですが、実施権の方は、複数の者への重複許諾が許容され、商標法のような弊害防止の規定もありません。


 勉強を始めた頃に「独占排他権(独占権と排他権)」と教わることが多いと思いますが、条文理解には、「排他権」と「実施(使用)権」の2面からの学習法が有効です。

弁理士 論文ゼミ
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posted by 目白ゼミナール at 17:58| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする