2018年07月16日

H30論文本試・意匠法・問題2(その2)

 2つ目の問いは「独占実施の確保」に関する問題です。

 答案構成では、「意匠権の譲渡」や「専用実施権の設定」を挙げる必要がありそうですが、「通常実施権の許諾」はどうでしょうか? 本問で注意が必要なのは、他人の権利は「部品」に係るものであり、独占実施を望むのは「完成品」であることです。

 それでは、問題文を確認しましょう。

「今後製造販売する意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」(これらの脚以外の具体的形状はま だ決まっていない)の意匠について製造販売等を独占したい」

 すなわち、「他人の意匠権に係る意匠イ(部品)を利用した椅子やテーブル(完成品)の製造販売等の独占」を実現するための施策が、クライアントからの要求となります。


 本問において深い理解が必要なのは、「排他権と実施権」の関係です。

 仮に、部品である意匠イに関し、意匠権あるいは専用実施権を得たとした場合、それを利用する完成品の独占実施は、確保できるのでしょうか? 部品に係る意匠権は、当該部品の意匠を利用する他人の完成品の実施を排除できるのみで、完成品に係る自己の実施の確保を保証するものではありません。

 そうすると、将来の完成品に係る出願および登録を目指すことが必要となり、当該完成品の独占実施に向けた「現時点での準備」としては、利用する他人の部品に係る意匠権の「実施権の確保」ということになりそうです。

 本問は、その点の理解を問う問題かと思われます。

 本年度の意匠法は、よく練られた「良問」と言えるのではないでしょうか。皆様も、本問に当たって答案構成を行いつつ、「排他権と実施権の関係の理解」を深めてください。

弁理士 論文ゼミ(目白ゼミ)
posted by 目白ゼミナール at 16:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月08日

H30論文本試・意匠法・問題2

 1つ目の問いは「出願の態様」に関する典型問題です。

  関連意匠
  組物の意匠
  秘密意匠
  動的意匠
  部分意匠
  全体意匠
  部品の意匠

 さて、どれを取り上げましょうか?
 いや、何を書けば「出題者の意図」に沿った答案になるのでしょうか?

 悩みますね。。。

 「意匠ロについて多様な出願の態様で保護することを検討」とあるので、意匠に係る物品が「テーブル」に係る出願に限るべきでしょうか?「「テーブル用天板」は意匠登録の対象となる「物品」であり」とあるため、テーブル用天板の部品の意匠も候補に入れたくなります。「取り得る出願の態様を全て示し」とあるので、「関連意匠の登録には言及しないものとする」ことに注意し、関連意匠以外は取り上げても良さそうな気がしますが、「関連意匠の登録」であり「出願」ではないので、取り上げてもよさそうな気がします。

 難しいですね。。。

 この様な問題の場合、「いつも以上に題意を取ることを意識」することが重要です。

 「意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」の意匠について製造販売等を独占したい」、「あわせて、各出願の態様の登録の可否を理由とともに説明」、「取り得る出願以外の手段について説明」といった出題の趣旨から「題意」を探る必要がありそうです。

 「部品に係る意匠権が他人に発生している場合に、当該部品を利用する完成品の意匠に係る権利を取得できるのか?」、また、「当該完成品の意匠に係る権利に戻づいて実施を独占することができるのか?」を考えた場合、「関連、組物、秘密、動的意匠」は優先度を下げても良いように思います。

 今年度の問題は、時系列や類似関係の整理も不要、かつ、典型問題であるため、中上級の受験生は10分くらいで答案構成を終えた方も多いものと思われます。

 しかし、そのような場合であっても、20分〜30分かけて、出題者の求めている解答は何か、すなわち「題意」は何かをじっくり考えることが重要です。

 本年度の問題は、そういう意味では、非常に良い問題です。問題文をしっかり読み、出題者の意図(題意)を考えてみてください。

弁理士 論文ゼミ(目白ゼミ)
posted by 目白ゼミナール at 17:32| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月01日

4法比較(侵害の定義(その1))

 侵害の定義は、四法共に直接的な規定はなく、複数の条文から構成されます。

 受験生の「好みにより」使い分けられていますが、以下、代表的な定義を示します。

特許権の侵害とは、
権限又は正当理由なき第三者が、
業として特許発明の実施をすること、
又は一定の予備的行為を行うことを言う。

実用新案権の侵害とは、
権限又は正当理由なき第三者が、
業として登録実用新案の実施をすること、
又は一定の予備的行為を行うことを言う。

意匠権の侵害とは、

権限又は正当理由なき第三者が、
業として登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすること、
又は一定の予備的行為を行うことを言う。

商標権の侵害とは、
権限又は正当理由なき第三者が、
指定商品又はこれに類似する商品等について登録商標又はこれに類似する商標の使用をすること、
又は一定の予備的行為を行うことを言う。

 四法を比較すると、「業として」の有無、そして、それに続くいわゆる「類似範囲」の実施(使用)の有無の違いがあるのが分かります。

 まず、商標法には「業として」の要件が無いように思われますが、「商標」の定義に「業として」があるため、四法の実質的な相違はありません。

商2条 この法律で「商標」とは、(・・・途中省略・・・)であつて、次に掲げるものをいう。
 一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
 二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

 従って、侵害の定義においては、意匠法および商標法のみ、いわゆる「類似範囲」の行為まで侵害を構成することになる点が、相違点となります。

 意匠法と商標法は、このように同様な侵害の定義となりますが、条文上は、その構成が異なる点の理解が重要です。

 「又は」に続く最後の定義は、いわゆる「間接侵害」と呼ばれるものですが、意匠法では意38条各号のすべてを指す一方、商標法では商37条2号以下、すなわち、1号を除く規定を指しています。

 弁理士試験は条文の理解を問う試験です。できる限り、条文に当たって理解を深めることをお勧めします。

弁理士 論文ゼミ(目白ゼミ)
posted by 目白ゼミナール at 16:33| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする