2018年08月11日

関連意匠制度の改正か?

 特許庁から「意匠制度の見直しの検討課題に対する提案募集について」が公開されました。
 https://www.jpo.go.jp/iken/180807_isho_seido.htm

 上記リンク先によれば「関連意匠制度の拡充」について、3つの論点が指摘されています。

@関連意匠の出願が認められるのは、本意匠の公報発行日前までとされている。本意匠の公報発行日後において関連意匠の出願を認めることについてどう考えるか。
A関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録を認めることについてどう考えるか。
B関連意匠の存続期間をどのように設定すべきか(本意匠の存続期間に合わせるべきか)。


 今回は上記@を取り上げて、「関連意匠の現状と課題」について理解を深めましょう。

 まずは、条文の確認からです。

(関連意匠)
第十条 意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(・・・かっこ内省略・・・)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、第二十条第三項の規定によりその本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前である場合に限り、第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。


 「本意匠の公報発行日前まで」とした理由は、改正法解説書に記載があります。

改正法解説書(H18年改正)
⑴ 出願時期緩和の期間設定
 関連意匠の出願を認める期間については、出願人の便宜のために、関連意匠出願に関する相応の準備期間を付与する必要があるところ、本意匠の公報発行までの期間とした場合には、本意匠の登録査定の謄本送達までの期間に加え、謄本送達から登録までの期間及び登録から公報発行までの期間の時間的余裕があり、関連意匠出願に関する相応の準備期間を確保することができる。
 一方、本意匠が公報発行によって公知となった後も、長期にわたる関連意匠の後日出願を認めることとすると、関連意匠が出願されるまでの期間中に、類似する他人の出願意匠や公知意匠が介在して後日出願に係る関連意匠との間で抵触する可能性が高まり、第三者の監視負担の増加や権利抵触による紛争の増加が懸念される。
 こうしたことから、関連意匠の後日出願の期間については、本意匠の公報発行日前までの期間としたものである。



 ところで、本意匠の意匠公報発行後は、当該公報が引用され、関連意匠の出願は3条1項3号の拒絶理由を有することになりますが、なぜ、この規定「本意匠の公報発行日前まで」が必要なのでしょうか?

 それは、秘密意匠を想定しているからです。

(秘密意匠)
第十四条 意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。


 すなわち、「本意匠の公報発行日前まで」の要件を外した場合、本意匠の出願人は、秘密意匠制度を利用する前提で、秘密請求の期間中、関連意匠を出願できることになります。現状の期間「登録日から公報発行までの数か月」が、「登録日から最長3年間」に延長され、関連意匠を出願し続けることができることになります。

 出願人にとっては、意匠権を取得できた意匠を中心に(本意匠として)、その後最長3年間の期間を使って、類似範囲(関連意匠として)への権利拡張が可能となり大きなメリットが得られます。

 改正に当たっては、出願人のメリットと併せて、第三者のデメリットを考える必要がありますが、この点は、皆様も是非考えてみてください!

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2018年08月05日

2018短答本試・意匠法2-枝1の変形問題

 今年度の短答本試「意匠法 問題2 枝1」は論文向け学習題材として「良問」です。

【意匠】2−1
意匠に係る物品を「一組のひなセット」とする組物の意匠登録について、内裏びな以外のひな人形が含まれていないことを理由に、意匠登録無効審判を請求することはできない。


 無効審判では、8条が対象となっておらず、よって、8条要件違反を理由に、無効審判を請求することはできません(48条)。

第四十八条 意匠登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録を無効にすることについて意匠登録無効審判を請求することができる。
一 その意匠登録が第三条、第三条の二、第五条、第九条第一項若しくは第二項、第十条第二項若しくは第三項、第十五条第一項において準用する特許法第三十八条又は第六十八条第三項において準用する同法第二十五条の規定に違反してされたとき(・・・かっこ内省略・・・)。



 さて、仮に本問で問われている事項が「拒絶査定の理由となり得るか?」であったとすれば、結論はどう変わるのでしょうか?

 構成物品が適当でない場合を含め、8条の要件違反は拒絶査定の理由となり得ます(17条1項1号)。

第十七条 審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その意匠登録出願に係る意匠が第三条、第三条の二、第五条、第八条、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項から第三項まで、第十五条第一項において準用する特許法第三十八条又は第六十八条第三項において準用する同法第二十五条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。



 論点を「本事例の構成物品は適当か否か」に絞りましょう。

 ここで、意匠法施行規則の別表2に「一組のひなセット」が定められており、また、構成物品については審査基準で次のような記載があります。

<審査基準>
組物の意匠は、原則、それぞれの「構成物品」の欄内に掲げられる全物品を少なくとも各一品ずつ含むものでなければならない。

「6 一組のひなセット」の構成物品
  内裏びな
  三人官女
  五人ばやしびな
  左右大臣びな


 それでは、審査基準をベースに「構成物品は不適当」と結論付けてよいのでしょうか?

第八条 同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

 8条(組物)は条文上「構成物品が適当」という要件は明示されておらず、あくまでも「同時に使用される2以上の物品」であることを要件として求めています。

 審査基準は法令ではありません。論文では、審査基準を自分の考え(解釈基準)に取り込んで結論を出すのはOKですが、審査基準を根拠として結論を導くことはNGとなりますので注意しましょう。

 本事案(内裏びな以外のひな人形が含まれていない)が「同時に使用される2以上の物品」に該当するのか否か、該当し得るのか否かを考えてみてください!

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2018年07月22日

2018論文本試・特許法・問題2

 「甲又は乙の特許法に関する誤解」に対する弁理士Aの正しい判断が(当然ながら理由と共に)求められおり、かつ、問われている事項の数が少々多いのが特徴的です。

 設問(1)は技術的範囲(70条)と利用関係(68条、72条)、設問(2)は実施行為独立の原則と実施行為(2条3項)、設問(3)は共有に係る特許権の行使および譲渡(73条)、設問(4)は損害の額の推定等(102条各項)の理解がそれぞれ必要となりますが、短答合格者であれば、特に苦労することなく「結論」を導くことができるでしょう。

 さて、この様な問題の場合、どこで「得点差」が生じるのでしょうか?

 一つは、「題意」即ち「出題者の意図」の把握です。

 例えば、設問(1)は「自己の特許権に戻づく実施は制限されることなく可能」に対する例外規定(72条)の理解が問われています。また、設問(2)は「他人の権利の存続期間中は製造のみを行い、満了後に販売を行うことに問題があるのか?」、即ち、「実施行為独立の原則」の理解が問われています。

 それぞれの設問の「題意」に沿った回答をできる限り行うことが得点差を生むことになります。

 次に重要になるのが「要件定立と丁寧な当て嵌め」です。

 要件定立をする方がベターですが特実法は時間が足らないため「直接当て嵌め」をする受験生も多いものと思います。今回の問題は「甲又は乙の誤解」を解消することができる「丁寧な当て嵌め」を行った答案の方が、より高得点を得ている可能性があります。

 今年度の問題(2)は判例や論点が無く条文ベースの問題です。通常よりも、ロジカルな「要件定立」→「当て嵌め」→「結論」の答案構成を心掛けることが重要です。

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